家族信託
ここ数年、話題になっている家族信託(民事信託)。
私たちの事務所にも、「家族信託のことを聞きたいのだけれど」と言って相談に来所される市民の方が少しずつ増えてきました。
しかし、日本では一般市民の間で民事信託を活用する文化がなかったため、現在でも、専門家ですら信託制度を理解している人は非常に少ないと言えます。
信託とは、ある人(「委託者」という)が、自分が有する一定の財産を別扱いとして、信頼できる人(「受託者」という)に託して名義を移し、この託された人においてその財産を一定の目的に従って管理・活用・処分し、その中で託された財産や運用益を特定の人(「受益者」という)に給付し、あるいは財産そのものを引き渡してその目的を達成する制度です。
つまり、「信じて財産を託す」という当事者の信頼関係によって信託は成り立ちます。
信託の中でも家族信託は、家族のための信託であり、遺言や相続や贈与などによらずに財産等を円滑に承継する仕組みとして、また、判断能力が不十分になって自分で財産管理ができず資産が凍結されるのを防ぐために、超高齢化が進んでいる日本にはなくてはならない仕組みとして、今、注目されている制度なのです。
家族信託を利用するにはまずこの制度をよく理解した上で、何のために信託を利用するのかを第一に考え、信託の内容を設計していく必要があります。
それには、家族信託をよく研究し、実際に実務を行ったことのある専門家に相談をなさるのが、安心で安全です。
家族信託は税対策にはなりませんし、遺留分対策にもなりません。
受託者が自分の金融資産と分別管理するために「信託口口座」という口座開設を希望しても、現時点でそれに応じる金融機関は僅かしかありません。
これら実務的なことまで知っている専門家はまだまだ少ないと言えます。
家族信託に興味がある、という方は、実際に家族信託の契約の設計や不動産の信託登記、遺言による信託のお手伝いの経験のある、当事務所の司法書士までご相談下さい。
(例)
下記は、父親とその息子が信託契約を締結した場合の簡単な説明図です。
父親が高齢になるに伴って判断能力が低下し、老人ホームへの入所を計画するような時、自宅を売却して入居資金を確保したいと思っても、父親自身に判断能力がなければ売却することができません。
そこで、判断能力があるうちに息子に信託により自分の財産を託して、いざというときは息子が自宅を売却して父親のために資金を確保したり、信託された金融資産から父親の必要経費を息子が代わりに支払ったりすることができるようになります。
これを「後見制度」を利用して行おうとすると、後見制度は父親の財産を守ることが目的となっているため、様々な制約がある上に、親族が後見人になれないケースも増えており、家庭裁判所に選任された第三者後見人が、父親が亡くなるまで、父親の財産管理を行うことになってしまいます。