法定後見の問題点
<何が問題なのか>
後見制度も、一般市民の方に認知されるようになって久しいかと思います。
専門職として、市民の方の成年後見人に就任して業務を行っている立場から、法定後見が抱えている問題点のいくつかをあげてみたいと思います。
法定後見制度の利用の「きっかけ」の主なものは以下のようなものです。
➀相続が発生して遺産分割協議を行いたいが、相続人の中に判断能力の低下した者がいて、協議を行うことができない。
➁高齢者本人が施設に入所する際、判断能力が低下しているために自分自身で契約締結ができない。
➂高齢者が自宅で一人で生活しているところ、頻繁に訪問販売業者が訪ねてきて、無駄な物を購入させられている。
➀と➁のような場合、目的を達した後(遺産分割が完了した、施設入所手続きが完了した)は、特に後見制度を利用せずとも、親族が財産管理を行っていけることが大半だと思いますが、
一度この法定後見制度を利用すると、成年後見人等は本人に相続が発生するまでその業務を行わなくてはなりません。
「お父さんの相続が発生した時、お母さんが認知症だったので、お母さんに成年後見人をつけて遺産分割をしたまでは良かったけれど、第三者の成年後見人にお母さんの預金通帳を持っていかれて、
お母さんに相続が発生するまで、その後見人に報酬を支払い続けなければならない。お母さんの年金は僅かなので、特にこれといって仕事もしていない成年後見人に報酬を支払うのは嫌だ。」
というようなことはよく耳にすることです。
現在、法定後見制度は、親族を後見人等に選任させない方向で進んでいっております。
成年後見人等に就任した専門職(弁護士や司法書士など)の中には、高齢者本人の親族に対して配慮の欠けた対応をする者も少なくないため、トラブルに発展する場合も多くみられます。
また、高齢者本人の金融資産では老人ホーム等の施設に入所する費用に不足することから、それまで住んでいた自宅の売却を希望する場合でも、家庭裁判所の許可を得る必要があるため
手続に時間がかかる、ということもあります。
今後、高齢者が増え、認知症に罹患する人は5人に1人とも、4人に1人とも言われています。
そんな中で親族が後見人等になれない状況が続けば、成年後見人等の担い手が不足し、専門職後見人等の中にはキャパシティを超えて後見業務を引き受けたためにずさんな業務を行う者も
出てくることが大いに予想できます。
自分たちがこのようなことに巻き込まれたくないのであれば、法定後見制度を利用しなくても、適切に財産管理を行っていけるように対策をするしか方法はありません。